
現在発売中の雑誌RACERSでは、AMAスーパーバイクのCB-Fを取り上げています。ゼッケン19番のフレディ・スペンサー号、43番マイク・ボールドウィン号、88番ロベルト・ピエトリ号とが一堂に紙面に集結し、各車の細かい仕様の違いなどを掘り下げて比較されるなど、今までのCB特集誌には無い濃密な内容になっています。CB-F好き、AMAレーシングマシン好き、そしてチューニングエンジン好きにとってはとても価値ある一冊になると思います。
微力ながらクレバーハンズもロベルト・ピエトリ号のエンジン回りで紙面作りに参加させて頂きました。80年代のデイトナを駆け抜けたCB-Fのエンジンには、古い基本構造の機関(当時はそれでも最新の設計思想だったはずですが)を限られた機械や技術で必死に改造し、150馬力のモンスターマシンを作る為に悪戦苦闘した当時のエンジニア、メカニック達の魂が刻み込まれているのを感じました。そんな ”・・・兵どもが夢のあと” を紙面を通して少しでも感じてもらえたら幸いです。


先のエントリで問題として挙げたタンクキャップ凹みの水抜き通路。
ホンダの場合は詰まりにくい太いホースと、ホースの折れ曲がりの無い
分離型受け皿タイプのジョイント部という構成で、もう万全の体制です。
いかにも日本らしい細やかな気遣いはNSR250など80年代から続いています。

カジバ V1000ラプター エンジン不動修理のご依頼です。
わりと珍しいバイクですね。ラプターとはジュラシックパークにも出てきた恐竜、
ラプトルの意味のようで、ところどころに恐竜をモチーフにした造形が
あったり、大型バイクらしからぬあそび心あふれたバイクです。
ラジエターが表裏逆に取り付けられているのもなんとなくエキゾチックかな。



ご覧のようにタンク内に水分(というより水そのもの)が混入し、
フューエルポンプのプラス側のリード線が腐食してちぎれてしまった事が
不動の直接の原因でした。
リード線の+-端子共に最下部、つまり水に完全に漬かる位置にあったのですが、
マイナス側は殆ど腐食しておらず、いわゆる電食が起きていた
のかなと思える状態でした。


タンクより取り外したフューエルポンプユニットです。
結構長い期間、水にさらされた状態だったことがわかります。



よくもこんなになるまで走れていたなと感心するぐらい腐食しています。


パーツリストもマニュアルも無いので、綺麗に元通りにだけしました。
ポンプ回りに致命的なトラブルもなかったのも幸いしました。

タンク内部も綺麗に洗浄します。こちらは樹脂製なので問題ありません。
途中で気が付いたのですが、ポンプユニットはどうやらスズキTL1000の
物をそのまま使っているようでした。
なので、まるごとダメでもパーツに関しては心配無用です。

タンクに組み込む前に通電してポンプ内を浄化します。

今回の不調の大元の原因がコレです。
タンクキャップ回りの凹みに水が溜まらないように逃がすホースのジョイントです。
耐蝕性の低いアルミが地肌のまま使われていました。
白い錆びで内部が完全にふさがれていた状態なので、タンクキャップを開けるたびに
回りに溜まっていた水がザバッとタンク内へ流れ込んでいたのでしょう。
この手の不具合はエアプレーンタイプのタンクキャップが採用され始め、
それらが古くなった状態で時々目にするようになりました。
タンク内を貫通するスチールのパイプ内部が錆びと汚れで詰まったり、
タンク下から延びるゴムホースが途中で折れ曲がっていたり・・・
エアプレーンタイプで古い年式のバイクに乗っている人は、一度点検してみる事を
お勧めします。