当店では実走行にてキャブレターのセッティング、サブコンピューターなどのインジェクションマッピングのセッティングを行っています。
対応機種は、CR、FCR、TMR、S&Sなどのスペシャルキャブレター、デロルトやミクニ、ケーヒンなどのSTDキャブレター、パワーコマンダーなどのサブコンです。A/Fメーターによるリアルタイムサンプリングと体感によって、ベストと思われるジェット類の組み合わせやマッピングを探ってゆきます。
セッティングというと、ピークパワーに目が行きがちですが、ピークパワーを発生させるスロットル全開域というのは過度特性的に比較的シンプルで、全体のセッティングの中では比較的探りやすい部分と言えます。
実走行ではエンジンのパワーがピークを超えて落ちてくるまでのフィーリングを見ますが、この域は機関スピードも速く、混合気の流速も早いので燃焼室への充填効率が上がり、どんな構成でも比較的素直な特性を持っています。一方、公道走行での乗車時に最も頻繁に使う事になるスロットル開度は全閉から2/3開度あたりになると思いますが、この範囲のセッティングは全開域に比べると難しくセッティングにも神経を使います。
特に低~中回転、低~中開度域は混合気に勢いがなく不安定な事や充填効率の問題でエキゾーストシステムの影響を受けやすいという事などがあります。高回転タイプのエンジンになるほど低回転の不安定さが増してきます。STDでもトルクの谷があるのはこの域です。また、スロットル全閉から開き始め付近のセッティングの不具合は、いわゆる開け始めの「ドン付き」の原因になったりします。
ちょっと話はそれますが、スロットル開け始めのドン付きは、駆動系の遊びの過多で助長される事が多いです。ドライブチェーンの遊びや磨耗、ハブダンパーのガタや硬化はなるべく少なくなるようにメンテナンスで改善しておくべきです。しかし無くす事の出来ない構造的な遊びは存在しているのですが、セッティングが上手く決まっていれば、スロットル全閉時からガタを吸収しながら綺麗に駆動が繋がって、嫌なドン付きのショックを抑える事が出来ます。
マルチエンジンでマフラーを交換した時に起こりがちな大きなトルクの谷は最高回転数の1/3付近で発生する事が多いようです。これはキャブレターのセッティングだけでは消す事は出来ませんが、改善することが出来る場合もあります。しかしあまりにピンポイント的なセッティングは全体のバランスを崩す可能性があるので、実際は妥協点を見つけるという作業になります。また、ライダーのスロットル操作の工夫も必要になります。
最後にキャブレターのセッティングはチューニング作業などの一番最後の調整になります。
一般に良く言われる「良い火花、良い圧縮」という2つの要素が十分でないとセッティングという「良い混合気」を作るための作業はほとんど無意味になってしまいます。タペット調整などが不適切あるいは圧縮不足のエンジン不調や、イグニッションコイルが劣化していたりなどの点火系統の不調は、キャブレター側の不適切な混合気濃度によるエンジン不調の後ろに隠れて見えにくい状態になりがちだからです。キャブレターセッティングは最後の仕上げで行うものと考えていいと思います。