アウトプットシャフトの分解写真です。
左側が現車から取り外した物で、右側が輸入の中古品です。
一見しても色が違いますね。
こちらのシャフトもギアのドック等の細かい所が違うのですが、
一番の違いはシャフトとギアホイール間に存在するオーリングの有無です。
パーツリストの番号で、赤丸で囲ったパーツがオーリングです。
「普通」のミッションではこんなところにオーリングは入りません。
こちらは取り外した年式のパーツリストです。
オーリングはリストから外れています。
R1100系のミッションは3種類あると書きましたが、
それぞれM93、M94、M97と呼ばれています。
初期のM93のミッションにはオーリングが入りません。
M94はオーリング入りで、M97でまたオーリングが無くなります。
この辺りの違いについてはこちらのリンク内の
「O-RINGS AS NOISE-SUPPRESSORS」に詳しく書かれています。
概要は、「フリーのギアがカタカタとうるさくて苦情が多かったので、
オーリングをギアとシャフトの間に入れて擦らせ、ダンパーの役目
をさせる事で静かにしました」と言うことですが、
その下の、「IMPROVEMENTS TO THE BOXER TRANSMISSION」
の記事のなかでは、
「いろいろ改良されたので、M97からはオーリングはいらなくなるでしょう」
(この記事が書かれたのが1996年なので)
と書かれています。
割と短い間にいろいろ改良されているんですねぇ。
でも、裏を返せば最初の設計があまり良くなかった、
と言えなくもないですが、
苦情の元になった問題自体はあまり大したことがない
ような気もします。
話が横道にそれたので元に戻して・・・・
カウンターシャフトをアッセンブリで交換しなくてはならない事
が判明して、さて国内在庫を確認すると、やはり有りませんでした。
しかも納期未定(注文時)・・・・。
まあ、新品は高価だし、いつ来るかわからないのなら程度の良い中古
を探して修理しようという事になりました。
これってエコですかね?
中古を探すにあたって下調べした結果、R1100系のミッションは
年代別に3種類あると言う事がわかりました。
また、後期の2種類に関しては互換性ありとのネット上の怪しい
情報も参考にしつつ、程度の非常に良いと思われる年式違いの
出物がアメリカにあったので、オーナーに入手してもらいました。
写真左が取り外したシャフトで右が中古で入手したものです。
赤丸で示したところは「ドッグ」と呼ばれる部分ですが、
微妙にテーパーの角度が違うのが分かると思います。
また右側のシャフトは隣り合うドッグの長さも違います。
しかしこの辺の違いはカワイイもので、実はシャフトの全長も
違っていたのでした・・・。
さて、問題のパーツが特定できたところで、部品交換にての修理になります。
本来ならばミッションをバラバラにして、ダメージのあるギアのみを
交換したいところなのですが、このBMW R系のカウンターシャフトは
残念ながらバラす事が出来ない仕様になっています。
当然バラバラでの部品供給もありません。アッセンブリです。
見たところ、このシャフトのみギアの固定方法が圧入になっています。
ちょっと話はそれますが、GSX1100系の刀もミッションの一部が
圧入されています。(確かローギアだったかな)
圧入部はセレーションなども無いただの穴と軸です。
ただ、こちらはメーカーからバラバラでも部品が供給されているので
ミッションのオーバーホールは可能なのですが、
何をするにもまずは端の圧入ギヤを外さなければならないので
ちょっとやっかいです。
特に長年使われてきたエンジンは、軸と穴の圧入代が多い事もあっ
て、金属同士の膠着が起きている場合があり、綺麗に外れない
事もあります。
まあ、圧入という固定方法自体があまり分解には適していないので
仕方ないと言えば仕方ないのかな?と。