しばらく前にエンジンのオーバーホールをご依頼いただいた90年代後半のスポーツスターです。
この車両、かなり個性的なカスタムですが、モディファイはほぼオーナー自らの手によるものと聞いてびっくりしました。
アルミダイキャストの部品も鋳物やさんに吹いてもらって、削って、磨いて、光らせて・・・と、もはや手間のかけかたはプロ顔負けです。
カスタムという言葉の意味がいつの間にか純正オプションや専用パーツをアクセサリーとして取り付けるという意味になってしまっている昨今、完成度の高いパーツがお金で買える時代にこのような手作りっぽさが今では逆に新鮮に感じます。
これまた先のエントリで触れた現行のCBR125Rです。
新車から一年間、走行13000kmでのステアリングヘッドベアリングです。
オーナーが初心者なので気づかなかったようですが、バイクを少し押し歩いた
だけでも相当な違和感が出ていました。
不具合を指摘させてもらって分解したこの状態は、想像よりも悪くてオドロキです。
キズを確認する為に綺麗にしましたが、グリスは多すぎるぐらい塗布されていまし
た。
ステムナットの締まりは緩いぐらいでしたが、最初はどうだったのかは不明です。
このベアリングには2つの不具合があって、一つは軌道面の深い損傷、もう一つ
はボールピッチ間にあるちょっと極端な錆び(腐食)です。
興味深いのはこの錆びが綺麗にボールピッチ間にあることです。
これは年間走行距離13000kmという「使用中」に発生したとはちょっと
考えにくく、製造後から納車までにこうなってしまった可能性の方が高そう
です・・・
ベアリングなどの損傷形態の一つとしてフレッティング コロージョン
というものがあります。
ベアリング本来の回転運動時では無く、静止時に非常に小さな振幅で振動している
場合に起こる摩耗や腐食を伴う損傷の事です。
上記の写真は本家のWikipediaから転載したものですが、良く似てますね。
1930年頃に貨物列車で揺れながら輸送された自動車のホイールベアリングの
損傷が頻発したことから問題視されはじめたらしいですが、スイングアームや
サスペンションリンクのベアリングのように、小さな回転範囲でつかわれる
ベアリングでも(程度の差はあれど)起こる事があります。
スクーターのリヤホイールのセレーション部などに赤い粉が出ていたりするのも
そうですね。
で、このCBR125Rは船に乗って日本へ運ばれているはずです。
そして、フレッティングコロージョンは輸送中の船のエンジンによる振動でも
起こる事があるそうです・・・
・・・確かに、車種によってステムベアリングの寿命が早い遅いはありますが、
昭和の時代からバイクを弄っている者にとっては、最新のモデルで、しかも
上記の使用状況でのこの状態は、Made in JAPAN じゃないから?って
思いたくなりますよね。
先のエントリで問題として挙げたタンクキャップ凹みの水抜き通路。
ホンダの場合は詰まりにくい太いホースと、ホースの折れ曲がりの無い
分離型受け皿タイプのジョイント部という構成で、もう万全の体制です。
いかにも日本らしい細やかな気遣いはNSR250など80年代から続いています。