よく壊れると言われるドカティのべベル系ラウンドケースのレギュレーターレクチファイアーです。
壊れるのは単に古いからなのか構造的なものかは良く解りませんが、自分のバイクも以前ツーリング先で壊れて立ち往生しました。その時はカーショップで適当なバッテリーを買って取り付け、帰路の高速道路を同行のバイクに前後サンドイッチしてもらいながら無灯火で帰った思い出があります。場所は山梨だか長野だかは忘れましたが、無事に帰りつけるかどうかのなかなかスリリングなツーリングになりました。(昔の事なので時効ですかね)
今回のトラブルはそれほど極端ではなく、充電能力が無くはないが相当に落ちてしまっている状態でした。
そこで今一度構造的なものを調べていたらウェブ上でいくつかの情報を得る事が出来、こちらのホームページでは回路図が載っていました。
Ref. Malcolm’s Regulator Notes
これがその回路図です。自分が見たわけではないので概略図か精細図かわかりませんが、エポキシで固められた基盤を壊して調べたという事です。
カバーを外したところですが、中の赤いケースの中に基盤がエポキシで固められているので、分解は相当根気よくやらならいと難しいでしょう。
自分の時は、そのまま捨ててしまいました。
今回は先の通り、ウエブ上で回路図が見つかったので現物を前にして眺めてみましたが、レクチファイア(整流器)の機能はあるはずなのに普通は数個あるはずのダイオードが見当たりません。
この回路を書いた人の説明では、発振回路とサイリスタ―の組み合わせで整流するタイプのレクチファイアだという事で、半導体が高価だった昔はよくあったスタイルらしいのですが、、、
ref. moto morini club nederland
ref. moto morini club nederland
上の写真はモトモリーニクラブのホームページに載っているものですが、ラウンドケースのレギュレーターとよく似ています。
また、このタイプは基板を樹脂で固めていないらしく、中の構造がそのまま見えてしまうようです。
ref. moto morini club nederland
こちらは手書きの回路図が載っていました。しかも素子の特性などや発振の周波数まで書き込まれていてより実体に迫る感じです。
ただ、ラウンドケース用と違ってダイオードが2個実装されているのと、コイルが3本線ではなく2本線から成っている、などの違いも見られます。
ホントに発振してるの?という好奇心から上記図面から発振器の部分を抜き出して回路シミュレーターのLTspice上で再現してみました。
上記の構成でバッテリー電圧をかけて1秒間走らせてみたグラフからの抜粋です。赤がコレクタに掛かる電圧、他の二つはそれぞれのコイルを流れる電流です。
確かに発振しています。しかも想像よりも高い電圧でオドロキました。実際は全波整流された直流が流れているはずなので、発振状態も異なるでしょう。
回路中のコイル(トランス)はサイリスタのゲート付近のコイルとも繋がっていて、この波でサイリスタを制御するというシステムというのがなんとなくわかりました。
また、一定の電圧に達するとこの波も消えてしまう事でレギュレーターの機能の一部にもなっています。
半分壊れている?レギュレーターですが直流の12vの電圧をかけて実際はどんな波形なのかを見てみました。上記のテスト回路と同じ所では測れないので、適当な端子にスコープを繋いでみました。
測定した波形がこれです。半分壊れている?ので正常なのかどうなのかわからないですが、とりあえずは発振しているのが確認できました。周波数は手書き回路上のメモとほぼ同じですが、電圧は全然違いますね。
とにかく、現在のダイオードブリッジとツェナーで構成されたシンプルで確実性の高そうなシステムと比べると、この古いイタリア製は複雑で微妙なバランスで成り立っているような印象を受けました。実際、回路テスター上でもコンデンサの容量などがちょっと変わるだけで全く発振してくれなくなったりします。
オリジナルでのパーツ構成というのも捨てがたいものですが、やはり電気ものは新しいのが良いです。快適な走行あってのラウンドケースなので、効率や信頼性重視という事で国産の適当なものへの代替が無難なのでしょう。