輸入車、国産車、旧車の修理、メンテナンス、カスタムの事なら八王子のクレバーハンズへ エンジン回りに強いショップです - CLEVER HANDS – since 1995

クレバーハンズからのお知らせ

【臨時休業のお知らせ】

現在は臨時休業の予定はありません。

【修理受付についてのお知らせ】

修理作業が大変混みあっていますので
新規の受付は予約のみとさせて頂いています。
何卒ご了承ください。

トピックス

ゼッケン88

RACERS

現在発売中の雑誌RACERSでは、AMAスーパーバイクのCB-Fを取り上げています。ゼッケン19番のフレディ・スペンサー号、43番マイク・ボールドウィン号、88番ロベルト・ピエトリ号とが一堂に紙面に集結し、各車の細かい仕様の違いなどを掘り下げて比較されるなど、今までのCB特集誌には無い濃密な内容になっています。CB-F好き、AMAレーシングマシン好き、そしてチューニングエンジン好きにとってはとても価値ある一冊になると思います。

微力ながらクレバーハンズもロベルト・ピエトリ号のエンジン回りで紙面作りに参加させて頂きました。80年代のデイトナを駆け抜けたCB-Fのエンジンには、古い基本構造の機関(当時はそれでも最新の設計思想だったはずですが)を限られた機械や技術で必死に改造し、150馬力のモンスターマシンを作る為に悪戦苦闘した当時のエンジニア、メカニック達の魂が刻み込まれているのを感じました。そんな ”・・・兵どもが夢のあと” を紙面を通して少しでも感じてもらえたら幸いです。

MOTO GUZZI V11  ミッションケースのクラック修理

moto guzzi v11

オートバイのトラブルの中でもあまり起こって欲しくない部類ですね。エンジンがフレームの一部を兼ねている車両の場合、事故や転倒などの想定外のダメージが加わった時に(それ以外でも起こりますが)連結部に力が掛かって思わぬ損傷が出る場合があります。

moto guzzi v11

moto guzzi v11

写真の矢印の部分から内部のミッションオイルの滲みがありました。車載状態では目視でクラックの有無は確認できなかったのですが、とりあえずの処置として液体パッキンで応急処置してあります。

moto guzzi v11

RIMG0179

車体から降ろしたミッションケースを分解し、原因と思われる部分の塗装を剥がしてアルミの地肌を出します。

moto guzzi v11

ダイキャストの肌が粗くて細かいクラックが解りにくいので、探傷剤を塗布します。

moto guzzi v11

こんな感じでクラックが浮かび上がってきました。

moto guzzi v11

反対側も矢印の部分に隠れたクラックがありました。

moto guzzi v11

端面の合わせ面にまで達してしまっていますね。修理するには嫌な場所です。

moto guzzi v11

裏側もご覧の通りかなり長いクラックです。

しかし・・・これらのクラックはミッションと車体を結合するブラケットの回りに集中してますが、ブラケット基部はいかにもクラックの入り易い形状、言い換えると応力集中が起きやすい角部を持つ形状になっています。
この部分がもっと滑らかなつながりになっていたら・・・力が分散されてクラックは発生しなかったかもしれません。

moto guzzi v11

moto guzzi v11

力の集中具合を確認できる簡単なモデルをつくってみました。
上方の固定部はフレームとの接合部でミッションケースに100Nの力が掛かったという想定です。角がキツイ上のケースでは応力集中で約6.5倍の647.3Nの力が掛かっているのに対し、下のアールを付けたものでは、272.4Nと4割程度に減少しています。
まあ、こんなことは誰でも想像できると思うのですが、スペース的な問題は無いのにも関わらずなぜこんな危ない形状をしているのかを考えてみると、恐らく最初のミッションケースの設計後にフレームが進化?したためエンジンマウントのレイアウトが変ってしまい、エンジンのブラケットに掛かる力の大きさや向きなどが変化してしまった・・・と言うところかもしれません。海外でも同様のトラブルが起こっているようなので、この車両だけのレアケースでもないようです。

moto guzzi v11

moto guzzi v11

moto guzzi v11

修理方法はアルゴン溶接になりますが、溶接することによっても溶融部と母材との境界にクラックが起こりやすいので、クラックの中に染み込んでいるオイル分を徹底的に除去しつつ母材の溶け込みなどを考えながらリューターで下加工を施します。溶接修理はこの下準備が作業の大半を占める場合が多いです。

moto guzzi v11

moto guzzi v11

アルミを盛り上げました。この後、境目に応力が集中しないようにリューターで仕上げます。合わせ面の処理はオイル漏れが起きないように手作業で平面を出さなくてはいけないので結構時間がかかります。

moto guzzi v11

moto guzzi v11

溶接部にシーラントを塗り、黒塗装で仕上げです。オリジナルは古いカメラのような縮み塗装ですが目立たないところなので・・・。で、ミッションケースのブラケットは、両側からフレームのブラケットと共にボルトで締結されますが、その時に少なからずミッションブラケットを内側へ倒す力が働いてしまう構造なので、ボルトの締結力でケースに不要な応力を発生させない為にカラーを作成して入れる事にしました。相手が鋳物で面が出てない為、最後は手加工で軽く圧入する程度のクリアランスに仕上げて完成です。