さて、問題のパーツが特定できたところで、部品交換にての修理になります。
本来ならばミッションをバラバラにして、ダメージのあるギアのみを
交換したいところなのですが、このBMW R系のカウンターシャフトは
残念ながらバラす事が出来ない仕様になっています。
当然バラバラでの部品供給もありません。アッセンブリです。
見たところ、このシャフトのみギアの固定方法が圧入になっています。
ちょっと話はそれますが、GSX1100系の刀もミッションの一部が
圧入されています。(確かローギアだったかな)
圧入部はセレーションなども無いただの穴と軸です。
ただ、こちらはメーカーからバラバラでも部品が供給されているので
ミッションのオーバーホールは可能なのですが、
何をするにもまずは端の圧入ギヤを外さなければならないので
ちょっとやっかいです。
特に長年使われてきたエンジンは、軸と穴の圧入代が多い事もあっ
て、金属同士の膠着が起きている場合があり、綺麗に外れない
事もあります。
まあ、圧入という固定方法自体があまり分解には適していないので
仕方ないと言えば仕方ないのかな?と。
ミッションケース単体だと嵩は大きいですが、重さはそれほど
でもないです。
フレームの一部であり、また強度上重要なスイングアーム
ピボットも兼ねているので、そこいらじゅうにリブが走ってます。
単なるケースカバーと違って、合わせ面も厚いです。
ボルトの本数も多く、締結強度は高そうです。
因みにパーツが汚れて見えるのは二硫化モリブデンの色です。
異音が始まりかけた時ぐらいからGL5規格のデフオイルにモリブデン
が添加されたものに切り替えてみたのですが・・・・。
中のパーツを全て取り出したところ。
ミッションとシフターだけなので、さほど数は多くないです。
写真左から、インプットシャフト、カウンターシャフト、
アウトプットシャフトと並んでいます。
さて、問題の異音の原因はどうなっているのか?
カウンターシャフトの2速ギヤの歯面にダメージがあるのが
わかります。
走行時の異音から想像していたイメージと、実際の状況が
ピッタリと一致していたのがちょっと嬉しかった。
っとここで喜んでいてはオーナーに申し訳ないところですね(笑)
トランスミッションのトラブルはそんなに頻繁に発生するものではありません。
おそらく殆どの人が一生経験することは無いんじゃないかと思います。
しかし、全ての部品に言える事ですが、いつかは寿命が来ます。
このRTは「音」がオーバーホールのきっかけでした。
ある特定のギアからのギア鳴りが数年前から少しずつ大きくなって、
異常な挙動はまったく無いものの、そろそろアカンなぁという
音量になってきたのでオーバーホールすることになったものです。
なるべく早く異常の兆候を察知して対処することが出来れば、
被害を最小限に留める事ができるでしょう。
人間の体と同じですね(笑)
しかしいざミッションオーバーホールとなると、
RTはミッションケースにいろいろな構造物が結合
しているので、取り外すまでが大変です。
クランクケースから分離する時にオイルシールを痛めない
ようにするための特殊工具(ガイド)が必要だったりもします。
外してみるとフレームの一部を成している事が良くわかりますね。
この角度から見るとまるで「車」って感じです。
どうか終わるまでに地震が来ないように(笑)