これはインプットシャフトと呼ばれているパーツです。
縦置きクランク&シャフトドライブ型エンジン独特の
パーツと言えるかも知れません。
クランクシャフトからの動力をミッションへ伝える為のパーツです。
そしてただのシャフトではないのは写真でわかるとおり、
カムとスプリングが組み込まれています。
これは、回転運動を一時的にカムを介して直線運動に変え、
下についているスプリングでエネルギーを吸収し、ドライブ系の
ショックを和らげる為のものです。
しかし、ショックは和らぎますが、動力自体は方向を変える
だけで、少なくなるわけではありません。
ベアリングのインナーレースの凹みがわかるでしょうか?
こちらはギア側のベアリングに接する部分です。
これらはどちらも相当に硬いパーツですが、
それらを磨り減らせるほどの力が掛かっていると言うことです。
(ref,largiader.com)
M97の初期型のミッション(左)はギアの内側に大きな面取りがしてあります。
これだとベアリングとの接触面積が小さく、応力が倍ぐらいになりそうです。
(ref,largiader.com)
後期型では面取りが排除され、有効面積が増えたようですが、
実際には上のイラストのように面取りゼロということはありません。
今回の対策後と思われるM97でも上の写真のような状態なので、
やはり面積不足なのでしょう。
アウトプットシャフトの分解写真です。
左側が現車から取り外した物で、右側が輸入の中古品です。
一見しても色が違いますね。
こちらのシャフトもギアのドック等の細かい所が違うのですが、
一番の違いはシャフトとギアホイール間に存在するオーリングの有無です。
パーツリストの番号で、赤丸で囲ったパーツがオーリングです。
「普通」のミッションではこんなところにオーリングは入りません。
こちらは取り外した年式のパーツリストです。
オーリングはリストから外れています。
R1100系のミッションは3種類あると書きましたが、
それぞれM93、M94、M97と呼ばれています。
初期のM93のミッションにはオーリングが入りません。
M94はオーリング入りで、M97でまたオーリングが無くなります。
この辺りの違いについてはこちらのリンク内の
「O-RINGS AS NOISE-SUPPRESSORS」に詳しく書かれています。
概要は、「フリーのギアがカタカタとうるさくて苦情が多かったので、
オーリングをギアとシャフトの間に入れて擦らせ、ダンパーの役目
をさせる事で静かにしました」と言うことですが、
その下の、「IMPROVEMENTS TO THE BOXER TRANSMISSION」
の記事のなかでは、
「いろいろ改良されたので、M97からはオーリングはいらなくなるでしょう」
(この記事が書かれたのが1996年なので)
と書かれています。
割と短い間にいろいろ改良されているんですねぇ。
でも、裏を返せば最初の設計があまり良くなかった、
と言えなくもないですが、
苦情の元になった問題自体はあまり大したことがない
ような気もします。
話が横道にそれたので元に戻して・・・・
カウンターシャフトをアッセンブリで交換しなくてはならない事
が判明して、さて国内在庫を確認すると、やはり有りませんでした。
しかも納期未定(注文時)・・・・。
まあ、新品は高価だし、いつ来るかわからないのなら程度の良い中古
を探して修理しようという事になりました。
これってエコですかね?
中古を探すにあたって下調べした結果、R1100系のミッションは
年代別に3種類あると言う事がわかりました。
また、後期の2種類に関しては互換性ありとのネット上の怪しい
情報も参考にしつつ、程度の非常に良いと思われる年式違いの
出物がアメリカにあったので、オーナーに入手してもらいました。
写真左が取り外したシャフトで右が中古で入手したものです。
赤丸で示したところは「ドッグ」と呼ばれる部分ですが、
微妙にテーパーの角度が違うのが分かると思います。
また右側のシャフトは隣り合うドッグの長さも違います。
しかしこの辺の違いはカワイイもので、実はシャフトの全長も
違っていたのでした・・・。