エンジントラブルの原因はコンロッドのビッグエンドベアリング
まわりでした。
ベアリングローラーが無残にバラバラになっています。
ローラーが直接当たるクランクピンのダメージもかなりあります。
これらから出た金属粉がメタリックなオイルの原因でした。
通常の使用ではこのような状態になる事はまずありません。
普通に乗ってここまでなるには、腰上のオーバーホールを何回も
重ねたり、車体回りの修理にも程々にお金をかけた後でしょう。
もちろん、オイル管理などはキチンとされていての話です。
大抵はその前に飽きてしまうか、ちょこちょこと小さなトラブルが
起き始めるとかで乗るのをやめてしまったりで放置され、
エンジンは大丈夫でも最後は商品価値が無くなって廃車というパタ
ーンが殆どでしょう。
このエンジンは大半がサーキットで使用されていて、
何回もの耐久レースや練習走行に使われてきたものです。
最後はレース中に寿命が来てしまいました。
話は前に戻って、小さいエキゾーストバルブのピストンへの当たりが
より大径なインテークバルブより大きい原因について。
両方のバルブ、シリンダーヘッドとピストンが衝突した原因は
他でもなく、コンロッド大端部のローラー損傷により大きく
なってしまったクリアランスによるものです。
このクリアランスの分、ピストンが上方へ行き過ぎて、
バルブやヘッドとぶつかってしまうのです。
クランクシャフトが回って圧縮行程でピストンを
押し上げる場合は、圧縮抵抗で下がり気味になり、
排気行程では上死点付近で慣性によりピストンが
上がり気味になります。
その時、上がりすぎたピストンに最初に当たってしまう
のがエキゾーストバルブなのです。
シリンダーまで外したら、ピストンの側面も傷だらけです。
これはピストンとシリンダー間のオイルクリアランスに
オイルと混ざったメタルパウダーが入り込んだ為です。
クラッチ側のエンジンカバーを外したところです。
かなり「濃い」メタリックオイルが溜まっています。
これではピストンなどはひとたまりもありません。
オイルポンプを分解したところです。
こちらも内部が傷だらけになってしまっています。
このようにあらゆるオイルクリアランスの部分はダメージを
受けてしまっています。
特にこのエンジンは、オイルの汚れをろ過するためのオイルフィルター
が装備されていません。
つづく
オイルを抜き終わったところでエンジンをバラし始めます。
金属の粉が出た割にはオイルが「嫌な臭い」になっていません。
エンジントラブルではオイルが高温になりすぎて焦げたようなにおい
がすることが多いですが、今回は全く普通の「300vの香り」でした。
外したシリンダーヘッドです。
↑の部分は本来カーボンで色が付いていますが
なんらかの原因でピストンが当たってしまってアルミの地肌
が見えている状態です。
赤丸で囲った部分もエキゾーストバルブのカーボンが落ちて
白く見えます。
何れもピストンが正常な動きをしていない事がわかります。
クランクシャフト回りのトラブルの可能性が大です。
こちらはピストン側です。
ピストンヘッドも同じようにヘッドやバルブと接近している部分が
完全に接触してしまっています。
これはもう少し接近して見たものです。
矢印の先がバルブの逃げ加工された「バルブリセス」と呼ばれる
部分です。
本来の逃げの部分がバルブと干渉して深く凹んでいます。
このバルブリセス、写真手前がインテークバルブ側で奥がエキゾースト
バルブ側ですが、よく見るとエキゾーストバルブ側の打痕の方が
深く見えます。
先ほどのヘッドの写真を見るとわかりますが、
手前に見えるインテークバルブの直径がエキゾーストバルブよりも
二回りほど大きいので、本来ならインテーク側の方が強く当たる
はずですが、結果は逆になっています。
これはバルブオーバーラップのタイミングとエンジントラブルの
個所との絡みによるものです
つづく
Page 4 of 10 «1 2 3 4 5 6 7 ... 10 »