ヘッドのサイドにはこれまた誇らしげにScreamin’ Eagleのプレート付きです。
ヘッドの放熱フィンもSTDより表面積の多い形状になっています。
シリンダーヘッドのコンプリートキットなので、ビッグバルブや
Bee Hiveと呼ばれる強化バルブスプリングが組み込み済みです。
燃焼室の形状が特徴的ですね。
インテークバルブとエキゾーストバルブを結ぶ範囲しか
燃焼室になっていません。
残りのピストン外径に相当する部分はスキッシュエリアとなっています。
先に触れたピストンヘッドはこの燃焼室形状に合わせた物だったのです。
一見して、相当コンプレッションの高そうな組み合わせです。
11.3:1という圧縮比はこの手のエンジンでは相当高いです。
この数字だけを見ると、ちゃんとセルモーターは回るのか?とか
ギクシャクした走りにならないかとか想像できますが、
組み合わせるカムシャフトがハイリフトでロングディレーション
なので、始動時や低回転時の圧縮圧力はそれほど高くはないので
ごく普通に始動や走行が出来ます。
手前がスクリーミンイーグルのヘッド、奥がSTDヘッドです。
冷却フィンのボリュームが相当増やされていると同時に、要所
要所で肉厚も増やされて、強度や耐熱歪性が上げられています。
これは今回のピストンに組み合わせるシリンダーです。
スクリーミンイーグル製ではなくS&S社製です。
今回のモディファイではボアもストロークも変わりません。
なので、シリンダーを変更しなくても問題は無いのですが、
過去に自分自身が真夏のレースコースでシリンダー焼き付き→
ボーリング→再焼き付きといった苦い経験をしているので、
スポーツスター系エンジンのパワーアップモデファイには
十分に耐久性のあるこのシリンダーを組み合わせています。
具体的にどういった所が耐久性向上のポイントになっているかと
いうと。。。。
アルミのシリンダーブロックと鋳鉄によるスリーブという構成は
STDと同じですが、これらの結合方法が違います。
STDが圧入方式なのに対して、こちらは鋳込み方式です。
シリンダーブロックの鋳造時に鋳鉄スリーブも一緒に嵌めてしまいます。
後から機械加工した穴とスリーブを圧入する方式に比べると
コストはかかりますが、耐熱変形性が上がります。
しかしこれでもお互いに溶け合うわけではないので、矢印の部分に
あるギアのような凸凹で、アルミの鋳物との接触面積を多くし、よ
りしっかりと結合させる為の工夫がされています。
裏側からも違いが判ります。
黄色い矢印で示した範囲がスリーブの厚みです。
これはSTDと同じ寸法です。クランクケースの穴とはギリギリ
まで拡大されているのでこれ以上厚くすることが出来ません。
メーカーがいっぱいいっぱいまでボアアップしてしまっている感じですね。
しかし、赤の矢印で示した部分は厚みが違います。
シリンダーベースから上はクランクケースの制約が無いので、
スタッドボルトとの兼ね合いを見ながら十分に厚みを持たせています。
そして、外側のアルミブロックの厚みも増やされていて、フィンの
長さも十分取られています。
こんな見えない所にここまで作り込まれているので、見た目は
同じようでも、手に持つとズッシリときます。
これらの性能自体はパワーアップには関係ない地味な部分ですが、
ハードな使い方をした時にその真価を発揮します。
左側のSTDピストンと比べるとヘッドの形状がいかにもハイコンプピストン
っぽい感じです。
写真では判りずらいですが、バルブの逃げ加工(リセス)もビッグ
バルブ対応で一回り大きいです。
横から見るとピストンスカートが短さが判ります。
STDピストンは鋳造製法のもので、SEのピストンは
鍛造製法です。
この製法の違いから、ピストンとシリンダーのクリアランスが異なり、
SEの方が指定クリアランスが若干広くなります。
その事と、このピストンスカートの短さとが相まって、
STDではほぼ聞こえない”ピストンスラップ音”が耳に
つくようになります。
あまり心地よい種類の音ではなく、精神衛生上は
ネガティブなファクターですが、ハーレーに限らず、
チューニングエンジンにはつきものの、性能を得る
為の税金のようなものです。
逆に言えばSTDピストン周りの静音性は、安心感や
信頼性につながる重要なファクターですね。
この辺はメーカーもなかなか両立が難しい部分でしょう。