ハンドリングの話ついでにキャンバースラストについて。
いや、これから解説を始めようというわけではありません(笑)
解説そのものについて少々触れておこうと思います。
まず、先のエントリで見たダンロップのキャンバースラストの説明は、
こんな感じで円錐を転がして曲がってゆくイメージでした。
で、こんどはブリジストンタイヤの説明を見ると、
今度はこのように、コインを転がして曲がって行くイメージです。
ちょっとダンロップのとは違いますね。
参考までにウィキペディアを見てみると、
これまた全然異なる説明です。ちなみに日本のウィキペディアでは殆ど
参考になる記事がなかったのでご本家の物を引用しました。
しかしこうバラバラだと何が本当か解らなくなりますね。
ダンロップとブリジストンのような説明は巷では時々目にする事がありますが、
ウィキペディアのはあまり触れられているのを見たことがありません。
で、ウィキペディアのリファレンスを見ると、
1) Foale, Tony (2006). Motorcycle Handling and Chassis Design
2) Cossalter, Vittore (2006). Motorcycle Dynamics
という2冊の本を参考にしている事がわかります。
一冊目のFoaleさんの説明はこうなってます。
(ref.Motorcycle Handling and Chassis Design)
これはウィキペディアの引用とは違いますね、どちらかと言うとダンロップの
説明に近いと思います。
では、Cossalterさんの説明はというと、
(ref.Motorcycle Dynamics)
これがウィキペディアの引用元だと言うことが解ります。(尤も本人が
記述しているかもですが)
実は上の2つの説明と、この説明では根本的な違いがあります。
それはキャンバースラストの発生がタイヤの変形に依存している事です。
ダンロップやBSの説明は、わりと古くからあると思うのでそのソースは知りませんが、
Cossalterさんの説明は彼らが2000年前後に論文で発表したもので、
比較的新しい解釈なんだと思います。
彼によると、最近発達してきたマルチボディダイナミクスにより、
タイヤのような弾性体を定式化して、より実際に近いモデル化が
出来るようになったと言う事らしいです。
この辺はさっぱりわかりませんが(笑)
数年前にヨーロッパホンダとMDRGがあるパドバ大学が共同で、
ライディングシュミレーターの研究開発を始めたとの記事があります。
地道なこういった研究の成果がバイクの安全に役立てられているんですね。
オーバーステアのメカニズムは、バイク自身の特性(ジオメトリ)と
タイヤの持つ特性を合わせた非常に複雑なものなので、乗っている感覚からでは
なかなか理解しにくいものです。
けれどもわりと最近発売されたダンロップ クオリファイアー2のタイヤ説明には
キャンバースラストチューニングなる言葉が謳われていて、
なにやらハンドルをこじる事と関係ありそうな事が書かれています。
以前のエントリでも触れたように、タイヤの曲がる力、横力(ラテラルフォース)は、
キャンバーアングルに因るキャンバーフォース(キャンバースラスト)と
サイドスリップによるコーナリングフォースを合わせた力になりますが、
上の説明のように前後のタイヤのキャンバーフォースの差が、ハンドリングに
大きな影響を与えています。
状況が定常円旋回として、ハンドリングとの関係をもう少し詳しく見るために、
MDRGのVittore Cossalterさんの著書、Motorcycle Dynamicsを参考にします。
(ref.Motorcycle Dynamics)
旋回状態の前後タイヤのキャンバーフォースの差を打ち消す力として
スリップアングル(コーナリングフォース)がついています。
これで前後のタイヤのラテラルフォースが同じになるよう
調整しているというわけです。(調整させられているのはライダーです(笑)
前後タイヤのキャンバーフォースが同じでニュートラルな場合と比べて、
リヤタイヤ側のキャンバーフォースが少ないと、その分大きなスリップアングルが付き、
バイクはより小さい半径で曲がろうと(小さい半径に釣り合わせようとする)します。
それをニュートラル時と同じコーナー(半径)に合わせる為には
フロント側のスリップアングルを減らす必要が出てくるわけです。
つまり、手でハンドルを押し戻す必要が出てくるのです。
以上が大雑把なオーバーステアのメカニズムですが、
弱いオーバーステアはわりとどんなバイクでも持っていますが、
それが強すぎるとハンドルをこじらなければならなくなるので、
出来ればニュートラルに近いほうがライダーは楽が出来ます。
「バイクは弱オーバーが良い」と言えるんでしょうか?
さて、ではタイヤをどう選べばいいのか?
これは試してみるしかないでしょうね(笑)
ハンドリングを決める要因はタイヤ以外の車体側にもあり、速度にも依存し、また
ライダーの好みにも左右されるので、一般的な答えっていうのは無いと思います。
CBの場合は私の勘で銘柄とサイズを変更し、ジオメトリにも多少変更を加えています。
つづく・・・・
ハンドルの切れ込みの続きです。
車では弱アンダーのハンドリングが良いなどと聞きますが、
バイクでは車に比べて何が良いとかはあまり聞かないですね。
CBの場合は強オーバーとでも言いたくなりますが、
こんな言葉もあまり聞いた事がありません。
でも、世の中にはちゃんとそんな事を研究している人達がいるんですね。
以前のエントリでも触れたMDRGというのがそれです。
上の図のように実際に走って計算結果を確かめたりしてます。
そしてそんな研究結果をネット上で提供もしてくれているんだから有難いもんです。
ハンドルを押し戻す力を言い表す良い日本語が無いと思うんですが(知らないだけ?)
彼らの言葉を借りればネガティブ ステアリングトルク
と言う言葉がそれに相当します。回転力なのでトルクなんですね、
ネガティブの理由は、力の向きが曲がる事を止めようとする方向だからです。
バイク自身の挙動としてはオーバーステアの状態です。
反対にハンドルをイン側にコジる力はポジティブ ステアリングトルクです。
これはアンダーステアの状態です。
ハンドルに何も力が要らない場合はニュートラルで、これならお馴染みです。
で、このステアリングトルクは手からの入力を現す言葉なんですが、
走行しているバイクのステアリング自身の振る舞いを表す言葉もあって、
ステアリング インデックスといいます。
日本語ではこの辺の概念に相当する言葉は無いのかもしれないです。
(良く知らないだけかもしれませんが(笑))
それで、だからCBの場合はグレートネガティブステアリングトルク
って感じなのでしょうか?
あとはオーバーステアのメカニズムが解れば良いのですが、これがなかなか難しい(笑)
すくなくとも直感的に解るシロモノではないです。
つづく・・・・・