転倒してディスクブレーキが変形してしまったドカティモンスター696。正面から見るとホイールも斜めに傾いています。
現場は平坦地で、それほどスピードも出ていなかったという事でした。
抜き取ったフロントアクスルは見事に曲がっていました。衝突ではなくてもフロントブレーキ操作からの転倒は比較的車体へのダメージが大きいようです。
転び方や車種によってフォークが曲がったり、フレームが曲がったり、ステムが捻じれたりと様々で、今回のようにバランス的に弱いところに変形が集中した場合は分かり易いですが、全体にバラけた場合はわかり難い場合も多く、曲がりの程度によっては気づかずに走っている車両も少なくありません。
特にフレームの「首」が捻じれた場合は他の部位に比べてハンドリングへの影響が大きいので、両手を放して真っすぐ走らない車両は(一部を除き)一度点検してみる事をおススメします。
KTM625SXCのレストア的なフルメンテをさせていただきました。
伝統のLC4エンジンは耐久性が高いと言われていますが・・・。
ピックアップの磁石まわりについた鉄粉や、
ドレンボルトの磁石についた鉄粉などは国産のエンジンではあまり見なくなりました。それでも2サイクル時代に比べれば信頼性は向上していると思います。
エンジンオイルの交換などのメンテナンスはしっかりとされていたエンジンなので内部は綺麗です。
燃調のずれやオイル下がりなどもなかったのでしょう。わりと綺麗なインテークバルブです。
バルブのフェース面には段付き摩耗がありますね。修正して使う段階は通り越しているので新品に交換します。
しばらく乗っていなかったという事で、エキゾーストバルブ周りには錆などもあります。
ローラーロッカーアームのニードルベアリングも交換します。ベアリングは寿命のある消耗品なので、相応の使用時間が経過していれば異常が無くても交換します。異常が認められるまでが寿命ですから。
バルブスプリングとリテーナーはセット品なので一緒に交換です。スプリング折れのトラブルは頻度としては低いですが、使用目的(レース)などを考えての判断です。
バルブシートの修正や摺り合わせ、ガイドのチェックなどを済ませてヘッドの下準備完了です。
ロッカーアーム本体は再使用、ベアリング交換で準備完了。
ピストンリング等の消耗品も交換し、腰上のメンテナンスが終了しました。
エンジンの次は足回りのメンテナンスです。
この車両はWPのサスペンションが装着されていますが、内部の細かな消耗品などはメーカーからすべて供給されています。
自作の冶具を使用してフリーピストンの正確な位置決めをします。
スイングアームやリンク周りのベアリング、ステアリングステム、フロントフォーク等、可動部は全てメンテナンスします。ついでにスポークの張替えと消耗しているブレーキディスクも交換です。
パーツの供給があるうちにメインハーネスも交換します。しかし、ラリーレース用の車両なので配線が各部でモデファイされており、オリジナルを加工しながらの交換なので手間がかかります。
フューエルタンクを社外に交換するところで部品製作が必要になりました。
説明書では使えるはずのSTDコックがタンクと合わず、メーカーにメールで問い合わせても解決しなかったので、ホンダ車のコックを流用する為にアダプタを作って・・・
そのまま使うとタンク形状が異なる為にリザーブ切り替えからガス欠までの残量が少なくなりすぎるので、ガソリン取り入れ口のパイプを延長してリザーブ量を確保しました。
各部を暖めて動作等の確認作業の為、相模川のモトクロスコースへ持ち込んで試乗テストしました。
外装類も交換し、レストア終了です。
かつての4スト250ccオフローダーの雄、ホンダXR250Rにもさすがに販売中止の部品が目立ってきました。修理というよりもレストア的な作業が必要になってきています。
リアサスペンション周りのメンテナンスでも、消耗品などはまだ困らないですが、シャフトなどの構成部品は既に手に入らなくなっています。
性能の良い純正サスペンションなので、非分解のシャフトを再メッキして再利用することに。
再メッキが終わったシャフト。結構な錆が出ていましたが綺麗に治りました。
全てのパーツを綺麗に洗浄して組み直します。
非分解な個所故にサービスマニュアルやパーツリストには構成部品の資料が載っていないので、分解時の記録を確認しながら作業します。
スイングアームやサスペンションリンク周りも一緒にメンテナンス。
フロントサスペンション周りもオーバーホール。部品として入手不可になると痛いのがアウターチューブです。内面の摺動部が減ってしまうと性能が維持出来なくなるので、古いバイクほどオイル交換の頻度は上げたほうが良いですね。
一通り足回りはシャキッとなりました。
なるべく良い状態を維持するためには、時々サスペンションを十分にストロークさせて、外部に露出している摺動面の油膜が切れないようにする事です。オイルは少しづつでも蒸発してしまうので、メッキ部の錆や、ラバーシールの摩擦抵抗の増大に繋がってしまいます。